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役人が許認可あるいは補助金を通じた利権を持たないということであろう。
許認可権限や補助金交付権限が広汎に与えられれば、これを大臣が1人で全て差配することが物理的に無理である以上、役人が大臣を飛び越えて実質的決定を行わざるを得ない状況に置かれることもある。
この点で、英国の中央政府における許認可及び補助金に関する権限の少なさは、一つの参考となる。
そもそも、役人に対してそれぞれの国民が抱くイメージの違いは何であろうか。
英国においても役人のイメージがあまり良くないのは確かと思われる。
例えば、ここ最近、英国で評判が悪い言葉の一つに(スピン・ドクター)というものがある。
マスメディアなどを通じて情報を操作し、あたかも独楽に回転(スピン)をかけるかの如くどんどん情報を自らに有利に操作する人をいうのであるが、官僚は、この言の規制と並ぶ悪いイメージの言葉であることは間違いない。
それでも、日英の行政官に対する国民のイメージには大きな差があるように思われる。
英国で役人が、官僚的という言葉で郷撒されるとき、そこには、「役人は、非効率的で無駄が多い」という悪いイメージが内包されている。
では、日本で、「役所こうした努力にこそ注意が払われるべきであろうし、日本も多いに学ぶべき点がある。
もちろん英国と同様、「役所は、非効率的で無駄が多い」というイメージも付きまとっているであろうが、より大きいものとして、「役所は尊大で徹慢で、近寄り難い」というイメージがあるのではないか。
そうしたイメージが生じる理由として、日本の役所は、許認可権や補助金の分配権を通じて国民の生活を直接に左右する権限を持っているということが挙げられるように思われる。
では、英国の場合はどうか。
もちろん、補助金や許認可は、英国においても当然に存在する。
したがって、問題は、補助金や規制が英国に存在するかどうかという点ではない。
その量あるいは規模その具体的運用が、両国の大きな違いなのである。
先ず、補助金の規模について言えば、英国は日本以上に中央集権的で補助金が地方財政に占める割合の高い国である。
英国の地方自治体の歳出に占める自主財源の比率は僅かに十数パーセントであり、中央からの補助金にその殆どを依存していることが分かる。
ところが、この補助金の九四%が、紐付きでない、つまり使途が明快なのである。
また、規制についても、酒、たばこ、ガソリンスタンド、大型小売店など日本で規制がある多くの事業に関して、英国では安全性や環境面からのものを除き、規制は極めて少ない。
その具体的運用についても、英国では様々な工夫がなされている。
最も注目すべきは、中央省庁の政策立案部門から独立した第三者機関の存在であろう。
例えば、教育機関・施設への補助金は、第三者機関を通じて行われているし、電気やガスの業務内容のチェックなどの規制も第三者機関が担当している。
こうした方法が、補助金や規制の具体的運用に当たっての透明性を高め、また、公正さに対する信頼を増しているほか、英国の役人のイメージアップにもつながっている。
ちなみに、K社とW社は、英国のこのような行政の在り方の歴史的背景として、近代的行政制度が発達してきた19世紀後半から20世紀初期の段階に、既に他国に先駆けて産業革命を成し遂げ大英帝国を築いていた英国では、自由貿易、レッセフェールが政策の基本で中央統制的な行政システムが必要でなかったし、植民地経営に当たっても、他の列強とは異なって、自ら直接統治をするのではなく、現地の支配者階級に統治を委ねるという方法を特定されておらず地方が自由に使える補助金である。
日本の場合には、紐付きでない地方交付税交付金の他に、大量の紐付き補助金があって、中央官庁が地方に対して口を挟む余地が多数残されているが、英国では、その可能性が少ない。
だからこそ、英国中央政府の役人には、ネラリストが求められてきたのだという。
さて、「政対官」の議論は、議会あるいは国会との関りでも論じられてきた。
「政」と「官」の役割を確認するという意味での大きな第一歩として、日本では、2000年から「政府委員制度の廃止」「クエスチョンタイムの導入」がなされたと言えよう。
政治家同士の討論を通じて、日本の国会を真に言論の府として蘇らせるという意味で画期的な変革であり、英国においても、日本政治の新たな展開として、好意的かつ興味を持って受け止められているようである。
ところが、これまた日本的思い込みの一つだと思うのだが、「政」が○なら「官」は×、あるいは、「政」が白なら「官」は黒というような二分法によって、一連の改革が「官」を国会から排除するという方向で理解されているようである。
「政」と「官」は、必ずしも、一方が立てば一方が立たずという二律背反的関係にあるものではなく、各々がそれぞれの役割を果たしながら協力しあう関係として捉えることも可能である。
その際、「官」が果たすべき役割は、大臣が議会あるいは国会での質問や討論に適切に対応できるよう十分なブリーフィングと資料の準備をする、議会や国会の現場での予想外の質問について対応する、大臣に代わって議会、国会に出席する、といった点が考えられる。
こうした点から、英国における「政」と「官」の関係を見てみるのも面白い。
その前提知識として、英国議会の特徴や仕組みについて簡単に触れておこう。
「英国議会は、男を女に変えること以外なら何でもできる」と言われるが、一方で、ジョン・スチュアート・ミルは、英国議会について、「議会の役割は統治することにあらず。
政府の活動を監視し統制を加えることにある」と述べている。
英国議会が国王の課税要求に同意を与える機関として発達してきたことは、既に紹介したとおりであるが、同様のことは、議会の同意を得て政府が集めた税金の支出についても言える。
つまり、議会の役割は、「行政府が必要であるとして求めてきた支出額について歳出権限を与える」ことにある。
圧倒的に政府立法が多いことも、このようなやや受け身の議会の性格を表している。
その背景には、二大政党制のもとで議会の多数派によって政府が構成される「民主的独裁」内閣制があると言えよう。
もともと、党派的色彩が必ずしも強くなかった英国議会も、19世紀、20世紀を経て次第に二大政党制のもとで党派的色彩を強め、20世紀の福祉国家・行政国家の発展を受けて、二大政党制に基づく「民主的独裁」内閣制へとその性格を変化させていった。
時には造反議員が出て政府が負けることがないわけではないが、現在では、大まかに言えば、政府の意思は必ず議会の意思として実現するという確信が働くようになっている。
したがって、英国では、「議会が法律を作り、政府はこれを実行する」という三権分立の考えは、必ずしも成立していない。
むしろ、政府が法律を作り、(ほぼ間違いなく)議会の同意を得て、政府はこれを実行するというのが、正確かもしれない。
また、最近の傾向として、政府が議会を無視するという点も指摘されている。
英国に来て驚いたのだが、B首相は、1998年1年間で264回の本会議採決のうち20回しか参加しておらず、M前首相が1995年1年間で216回の本会議採決のうち74回に参加したのに比べると激減している。
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